舞台裏日記

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2011.3.31(木) キャンセルキャンセル

今日は本来なら合唱団の指導の仕事があったのですが、
このたびの節電の影響で、公共施設の夜間使用が不可能になりました。
普段公共施設を使用している合唱団は練習ができず、
僕の仕事もキャンセルになっています。
もちろん収入はなくなります。
この深刻な状況をどう打破すべきか…。
でも、合唱団あっての指導者という仕事ですから、
僕自身が動くことはできません。

行動の早い合唱団はすでに別の民間スタジオを手配したり、
練習曜日や時間を変更して、なんとか練習を確保しています。
僕は仕事も入れられず、待つしかありません…。
早く日常に戻ってもらいたいものです。
音楽家は生き残っていけるのだろうか。

そんな訳で今日は一日OFF。
(実は明日も)
家に引きこもって、DVDを観たり、部屋の整理をしたりしていました。
あ、ヒゲをそりました。
明日は髪を切って、作曲もしようかな…と思います。
3月が終わりました。
今年はずーっと本番が続き、4月は唯一本番が全くありません。
しばしのお休み。



2011.3.30(水) オペラサロントナカイ出演


2回目のオペラサロン・トナカイ(通常営業)出演でした。
今回はいろんな想いがあり、あまり宣伝できずお客様を呼べませんでした。
それでも生徒さんたちに前日にお願いをしたら、
何人か来てくれました。
本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

出演者…
ソプラノ:坂野早苗、テノール:志摩大喜、バリトン:古澤利人
ピアノ:池松玲子

今日のセットリスト…
【第1ステージ】
1、ピアノソロ(池)
2、オペラ「ドン・パスクァーレ」より「なんと穏やかな四月の夜」(志)
3、エンパイア劇場の歌姫(坂)
4、禁じられた音楽(古)
5、霧と話した(志)
6、オペラ「魔笛」より「愛を知る男たちは」(坂&古)
7、エーデルワイス(坂&志&古)

【第2ステージ】
オペラ「カルメン」より
1、ハバネラ(坂)
2、闘牛士の歌(古)
3、母の便りを聞かせてよ(坂&志)
4、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」より「窓辺においでよ」(古)
5、オペレッタ「こうもり」より「公爵様、あなたの様な方は」(坂)
6、オペラ「愛の妙薬」より「人知れぬ涙」(志)
7、オペラ「椿姫」より「乾杯の歌」(坂&志&古)

【第3ステージ】
1、オペラ「魔笛」より「パ・パ・パ」(坂&古)
2、オペラ「アルルの女」より「フェデリーコの嘆き」(志)
3、You Raise Me Up(坂)
4、マイウェイ(古)
5、ふるさと(坂&志&古&お客様)


お客様は少なかったけど、すごく盛り上げてくださって、
すごく楽しいステージでした。
MCも調子良かったな…。
共演者の皆さんも素晴らしかった。

第2と第3ステージの間の休憩中、
メールが届きました。
僕の幼馴染が昨日亡くなった…という知らせでした。
もう何年も会っていなかったけど、
男っぽくて、いつもクリエイティブで、僕は憧れていました。
第3ステージでは、今回の震災のことも少し振れてMCしましたが、
彼のことも思い出しながら心をこめて歌いました。

僕らが今こうして生きているのも、歌っていられるのも、
そしてお客様たちと出会えたのも、全部が奇跡です。
毎日を感謝し、精一杯自分の信じた道を歩いていきましょう。

トナカイでは通常、最後は「メリー・ウィドゥ・ワルツ」を歌って終わるのですが、
今日は出演者で話し合って、お客様と「ふるさと」を歌うことにしました。
歌いながら涙が出ました。
それだけで、心が少し癒された気がしました。
今するべきは被災地の方々と一緒に泣くことではない。
共に同じ時代を生きていることを、共に喜び合い、
そして力いっぱい「生きる」こと。
今日、あの空間にいた人たちだけでも心を通わせ、
一つになることができました。
それならば、何百・何万人の人が一つになることも可能なはずです。
その為に僕は歌い続けていこうと思います。
皆さんの力も貸してください。



2011.3.29(火) 「カルミナ・ブラーナ」観賞

今日はレッスンをしてから、上野へ向かいました。
偶然、指揮者&作曲家の相澤直人さんが上野にいることをTwitterで知り、
待ち合わせをしてお茶をする。
時間が来たので相澤さんと別れ、東京文化会館へ。

合唱舞踏劇「カルミナ・ブラーナ」を観に行ってきました。
2007年にオペラ「魔笛」でお世話になった橘直貴さんが指揮。
昨年「リゴレット」&「魔笛」でお世話になったダンサーの遠藤綾野さんが出演。
たまたま合唱団の仕事がキャンセルになったので、急遽チケットを手配してもらいました。

すごく良かったです!!
今まで観た中でもベスト3に入る素晴らしい公演でした。
肉体表現と音がリンクしていて、
コロスとダンサーと合唱が見事な宇宙を創り上げていました。
力強い【人間の力】を魂で感じられる公演でした。
バリトンソリストの駒田敏章さんも声・歌・演技とも素晴らしかった。

すごくたくさんの刺激を受けました。
行って良かった!
これはまた再演して欲しいし、その時はもう一度観に行きたいです。
…こんな風に思った公演は初めてです。
橘さん、綾野さん、お疲れ様でした。

明日、オペラサロントナカイに出演します。
実はご案内をするタイミングを逃してしまい、
僕のお客様がほとんどいません…。
お時間がございましたら、ぜひお越しください。
当日お問い合わせでも大丈夫です。
ご予約はメールで



2011.3.28(月) 灯油を買えました

先日までの行列はなんだったんだ…。
隣のガソリンスタンドはすっかり平穏を取り戻していました。
2日ほど休業してからの再開。
あれほど殺到した混乱が嘘のように、普通の営業を行っていました。
そんな訳で今朝やっと灯油を買うことができました。

午後に池袋でレッスン。
その後は予定が何もなかったので買い物。
またまた合唱曲集の楽譜を購入してしまいました。
喫茶店に行って、ゆっくり過ごしたり、
i-pod touchのアプリを取得したりしていました。

今日も食べまくりました。
若干、下腹だけ出てきた感。。。
筋トレしないとな…。



2011.3.27(日) 子供たちからもらうエネルギー

今日は様々な用事がキャンセルになりましたが、
尊敬する兄貴(と勝手に呼ばせていただいている):宮本益光さんが指導する、
シンフォニーヒルズ少年少女合唱団の定期演奏会に招待していただきました。

とても素晴らしい演奏でした。
地震の影響で最後の追い込みの練習ができなかった…とのことでしたが、
普段からの基礎指導がいきわたっている感じでした。
発声や発音も、一時代前の「過多」なものがなくて、とてもナチュラル。
言葉や表現が自然に伝わってきました。
僕の好きな音色でした。

プログラム構成もとても良かったし、
団員の子たちが間に入れるMCも流れが良く、
あっと言う間に時間が過ぎていきました。

最後の部で歌われた宮本さん作詞、加藤正則さん作曲の合唱組曲、
「歌いたがりの歌の歌」はバラエティに富んでいて、
ステキな曲でした。
宮本さんの飾らずにストレートに心に届いてくる言葉選びとドラマ性。
加藤さんの場面場面を切り取る音による語り口はとっても大好き。
思わず帰りに楽譜屋さんに立ち寄り、
このお二人のコンビによる別の合唱組曲「あしたのうた」を購入しました。

この演奏会の中で何度も胸が熱くなり、何度も目頭を押さえました。
子供たちの歌声に心がいやされました。
「歌」って素晴らしい。「歌」があるから今この瞬間がある。
勇気と元気を与えてもらった演奏会でした。
シンフォニーヒルズ少年少女合唱団の皆さん、ありがとう。



2011.3.26(土) 子供たち大人たちの笑顔

今日はあの地震以来初めて、
江東少年少女合唱団の指導へ行きました。
子供たちはみんな元気な様子でホッとしました。
以前からあまり表情を表に出さない子が多いのですが、
歌も少ししょんぼりに感じました。
それを力づくで引きずり出して良いものか…迷いながらの指導。

今日はいつもの練習を少し早目に切り上げて、
親御さんを招いて「ミニコンサート」を催しました。
先日ある予定だったイベントで歌わせていただくはずだった曲。
イベントごと中止になったので、せっかく練習してきたものを披露。

子供たちが元気いっぱいに歌っている…。
それを見るだけで僕は涙が出そうでした。
せっかくなので僕もソロを歌わせてもらいました。
「赤とんぼ」を歌っていたら、なんだか胸が熱くなってしまい、
声も震えそうになり、上手く歌えませんでした。
気を取り直してMC(ウソの話で前フリ)してからの「電話」。
ご存知の方も多いと思いますが、この「電話」は鉄板曲。
子供たちもご父兄の方々も笑顔になりました。
笑顔っていいですね。僕まで元気をもらいました。

夜は池袋でレッスン。
終わったのは23:30…さすがにちょっと疲れたかな…。


僕の小学校時代の同級生が、日記を読んでくれているそうです。
少し前まで続けていた「今日の一曲」を読みながら、
お子さんと歌を歌ってくれていたみたいです。
これからも不定期に続けてみようと思います。

では彼女からのリクエストにお応えして今日の一曲・・・

よくよく考えると深い歌だ…「これでいいのだ〜」



2011.3.25(金) 僕は考える

わからない。
いま何をすべきなのか。
今がどんな状況なのか。

誰も経験したことのない場面に僕たちは今生きている…。

わからないのは仕方のないことけど、
「考える」ことは今、誰にでもできて、一番重要なことのように思える。


自分にできることって何だろう?

自分って何だろう?
歌って何になるんだろう?

家族って何?
友達って何?

支え合うってどうやるの?
思いやりってどういうこと?

そんな今まで見過ごしてきたものを、考えるチャンスなんだと思う。

日本は今もしかしたら壊滅的な状況にあるのかもしれないけど、
ここで一人一人が「考える」ことをやめず、乗り越えることができれば…
日本は世界中のどこにもない「愛の国」になることができるかもしれない。

なんて…楽観的な理想論。
でも夢見ることは明日への希望だ。



2011.3.24(木) 寒い…

灯油が売ってない…。
わずかな灯油を大事に使うためにストーブを点けずに、
息が白くなるほど寒い部屋で耐えています。
こんな生活いったいいつまで続くのか…。

今日は池袋で「泥棒とオールドミス」の立ち稽古初日。
前半は暗譜できていたものの、後半はまだまだ暗譜が薄く、
悔しいけど楽譜を持ちながら動きました。
一気に荒立ちをつけました。
あとはもっとキャラクターを深く作っていく作業です。
「夢を求めて旅をする浮浪者:ボブ」
一体どんな人なんでしょうね…。
要研究。

帰宅してから、そんなわけでダウンジャケットを着たまま。
電気ヒーターで寒さをしのぎながらピアノに向かいました。
せっかくこんなに時間が余っているのなら…。
5年以上も中断していた歌曲集「ぼくは馬鹿になった」(詩:ビートたけし)の作曲を再開。
今日はこれまで書いた13曲を復習してから、
小曲を1曲作りました。
おそらく「歌曲集」としてステージで歌う場合に終曲になる予定の曲です。
とてもシンプルで美しい曲ができました。
早くこの曲が皆さんのお耳に入る日が来るといいなぁ…。

では寒いのでお風呂入って早く寝ます…。
東京も未だ被災地です。



2011.3.23(水) 仕事復帰

今日から東京での仕事復帰。
…とは言え、レッスンなどのキャンセルも相次ぎましたので、
夕方までは何も予定がなく、とりあえず家の中の片づけをしました。
3月30日のトナカイステージの準備も進めなければならない…。
なかなかお客様をお呼びしにくいタイミングではありますが、
こんな状況だからこそ、歌を聴いて心の疲れを癒してもらえたらと思います。
ぜひお越しください。

夜に池袋へ。
とある打ち合わせをしました。
今立ち止まっても何も生まれない。
ずーっと先の話ではありますが、いろいろ企画して良いものが生み出すためにも、
今は行動あるのみです。

その後、スタジオでお一人だけレッスン。
久しぶりのレッスンだったけど、やっぱり歌は良い。
なんだかその時間だけは、大変な生活のこととかを忘れていました。
帰りの電車も空いていたし…。
復帰初日としては、とても良い一日でした。



2011.3.22(火) 帰京

東京に帰ってきました。
羽田に着いたらとっても寒かったです。
飛行機を降りて携帯電話の電源を入れた途端に緊急地震速報が鳴りました。
地震災害はまだ終わっていない…ということを思い知らされました。

その後、都心へ戻ってくると…
どこも節電の為に照明を落としていたり、
早々に閉店してしまっている店がたくさん。
夜になるとさらにすごくて、
渋谷のスクランブル交差点はまるで深夜のようにひっそりとしていました。

池袋もいつもなら煌々と光り輝く看板がついておらず真っ暗。車のライトが街を照らす。

僕が乗る西武池袋線は長蛇の列。
電車の本数が減っているのでどうしても乗客が集中します。
なんとか乗り込んだ電車もラッシュ時のようにギュウギュウ。
やっとの思いで最寄り駅にたどり着きましたが、
お店に入ったらパンやら食料品がこんな有様。


帰宅してからも連続して大きめの余震が…。
メダカたちは元気に泳いでくれているので安心しましたが、
これからの毎日がとっても不安です。
合唱団指導の仕事も全てキャンセルだし…生活していけるんだろうか?



長崎オペラ「ラ・ボエーム」A組キャスト



2011.3.21(祝) 長崎最後の夜

オペラ「ラ・ボエーム」が両日とも終演しました。
別組の本番は客席で観させていただきましたが、
舞台の美しさに感動!!!
だって、第1幕の緞帳が上がったら、パリの街の煙突から煙が出ているんです。
そして、ボヘミアンたちがストーブに火を入れると、
屋根の上の煙突からも煙が出ます!!
す、すごすぎる…。

第2幕の大迫力もすごかったし、
第3幕の雪景色も素晴らしい…。
A組・B組で同じ演出でも、演じる人が違えばキャラクターも微妙に違う。
だいぶ違う仕上がりに、純粋に楽しめました。

終演後は打ち上げ。
僕はほとんど子供たちと遊んでいました(汗)
途中、お肉をノドに詰まらせて悶絶していたりしましたが(笑)
関係者の皆さんと交流ができて楽しい打ち上げでした。

ホテルに帰ってきて…。
ふと独りになった時の孤独感というのは、ものすごい落差です。
公演の興奮と、孤独感と。
そんなものが一気にこみ上げてきて眠れなくなります。

明日の荷造りしなきゃ…。
長い間お世話になった長崎とも明日お別れ。
寂しいです。
東京の皆さん…明日帰ります。
東京はまだ大変そうですね。
明日から気を引き締めて、またイチから頑張ります!!
長崎の皆さん、大変お世話になりました。
また呼んでくださいね。

開演前のロビーの様子…1時間以上前から長蛇の列


今日の一曲…

【長崎は今日も雨だった】

作曲:彩木雅夫
作詞:永田貴子

一、
 あなたひとりに かけた恋
 愛の言葉を 信じたの
 さがし さがし求めて
 ひとり ひとりさまよえば
 行けど切ない 石だたみ
 ああ 長崎は今日も雨だった

二、
 夜の丸山 たずねても
 冷たい風が 身に沁みる
 愛(いと)し 愛(いと)しのひとは
 どこに どこにいるのか
 教えて欲しい 町の灯よ
 ああ 長崎は今日も雨だった

三、
 頬にこぼれる なみだの雨に
 命も恋も 捨てたのに
 こころ こころ乱れて
 飲んで 飲んで酔いしれる
 酒に恨みは ないものを
 ああ 長崎は今日も雨だった



2011.3.20(日) 長崎オペラ「ラ・ボエーム」本番

今回の災害でお亡くなりになった方々、
そして心をとても痛めている方々へ、
届くことのない励ましと祈りをこめて…
長崎オペラ「ラ・ボエーム」が公演されました。

オープニングは急遽挿入されたJ.S.Bach「G線上のアリア」。
激しく、そして鎮魂の演奏でした。
これは「G線上のアリア」ではなく「レクイエム」でした。

30秒の沈黙の後、オペラ「ラ・ボエーム」が開演しました。
同世代の四人が演じたリアルなボヘミアン役の僕たち。
若々しく新鮮で、舞台上でたくさん語り合った気がしました。
ロドルフォのリッカルド・ボッタさんはこの役は初役とのこと…信じられません。
マルチェッロの横山浩平くんはオペラデビュー…立派に大役を演じ切りました。
コッリーネ役の松尾敬さんはグランドオペラの大きな役は初めてとのこと。
唯一僕はこのショナール役をすでに10回以上演じている十八番のレパートリー。
言葉では語らずとも、舞台で演じながら目と空気でコンタクトしながら、
何か一つのものを紡ぐように創り上げていきました。
とても心地良い舞台でした。


↑開演前


B組ゲネプロのカーテンコール…豪華なセット



今日の一曲…

【冬景色】

一、
 さ霧消ゆる 湊江(みなとえ)の
 舟に白し 朝の霜
 ただ水鳥の 声はして
 いまだ覚めず 岸の家

二、
 烏(からす)啼(な)きて 木に高く
 人は畑(はた)に 麦を踏む
 げに小春日の のどけしや
 かへり咲(ざき)の 花も見ゆ

三、
 嵐吹きて 雲は落ち
 時雨(しぐれ)降りて 日は暮れぬ
 若(も)し灯火(ともしび)の 漏れ来(こ)ずば
 それと分かじ 野辺(のべ)の里



2011.3.19(土) オペラ「ラ・ボエーム」場当たり&ゲネプロ

いよいよ本番を明日に控え、
今日はオペラ「ラ・ボエーム」の場当たり&ゲネプロでした。
ちょっと早い入り時間で、楽屋待機。
メイクの時間になったらメイク室へ行きメイクとヘアメイクを施してもらいます。
他のキャストさんはみなさんカツラだったのですが、
髪を伸ばしている僕だけ自分の髪でした。

衣裳も来て場当たり稽古。
実際の舞台で立ち位置や動線の確認をしました。
近年の財政難で小規模化しているオペラの舞台セットですが、
今回の舞台はすごい大がかり。そして美しいセットと照明。
こんな舞台で演じられるなんて光栄です。

ゲネプロ開始。
イタリア人テノールのロベルト・ポッタさんにつられて、
歌うことよりも語ることを意識しながら演じられているような気がします。
明日…精一杯歌い・演じます。
実質的には僕らはこの災害の為に何もできませんが、
せめて気持ちだけは一つに。
心をこめて頑張ります。

第4幕で、仲間たちがミミのためにいろんな想いで行動をします。
しかし音楽家であるショナールには何もできることがありません。
ただただ立ちつくすショナール。
しかし哲学者コッリーネは自らのコートを売りに行く際に、ショナールに語りかけます。
「ショナール。僕たちは彼らの為に何かしてあげよう。
 オレは(コートを示して)これだ。おまえは・・・
 彼らを二人っきりにしてやろうぜ。」
そうだ…僕には何もないけど、優しさを示すことはできる。
彼らの為に部屋を出ていこう。
ショナールは自分のすべきことを定めて、部屋を出ていくのでした。

僕ら音楽家にできることって本当に何もない。
だけど、何かを示すことはできるはず。
これからの復興を支援できるよう、何らかの行動をしたいと思います。


今日の一曲…

【春よこい】
作詞:相馬 御風 作曲:弘田 龍太郎

一、
 春よ来い 早く来い
 あるきはじめた みいちゃんが
 赤い鼻緒の じょじょはいて
 おんもへ出たいと 待っている

二、
 春よ来い 早く来い
 おうちのまえの 桃の木の
 つぼみもみんな ふくらんで
 はよ咲きたいと 待っている



2011.3.18(金) 長崎5日目はトリ

今日は一日練習が取りになりました。
ここでテンションが一度落ちるのはちょっと怖い。

昨夜のマッサージが効いたのか、珍しく早朝に起床。
もみ返しが痛みましたが、朝食を食べに行きました。
部屋に戻ると再び睡眠。
お昼まで寝ていました。

午後は観光することに。
今日はまず長崎駅から徒歩5分の「日本二十六聖人殉教地」へ。
徒歩5分とは言いながらも、ものすごい角度の坂をひたすら登る。
「日本のゴルゴダの丘」とも呼ばれるだけはある…。
  
キリスト教迫害のためポルトガル宣教師と日本人聖人たちが十字架に磔にされた場所。
中には子供もいました。
資料館でその子が残した手紙(遺書)が残っていたり、
様々な資料を閲覧することができました。

続いて、路面電車で3駅。
鎖国政策下にあって唯一貿易が許された「出島」へ。
今は周りも埋め立てられ、普通の街の中に再現されています。
 
様々な資料や出土品を基に完全再現されている出島。
一種のテーマパークのような様相でしたが、
どちらかというと、その再現に至る経緯を展示したものが多く、
正直、あまり面白くありませんでした。
むしろ出島を出た後に見つけた「出島公民館」の方がハートを捉えました。


出島から丸山町方面まで歩きました。
丸山町は芸者の街。
つまり蝶々さんがピンカートンと出会うまで活躍していた場所です。
もちろん蝶々さんは架空の人物ですが、
長崎の人は芸者である蝶々さんがこの街にいたであろうことは当然のように感じています。
現在も芸者さんが出張しています。繁華街の方は風俗街でした。

↑何かテレビロケをやっていました。
 
左:交番…かわいい…  右:丸山公園の竜馬像


これが長崎検番。ここから芸者さんが派遣されていきます。
実際僕が歩いていた時もベテランの芸者さんがお二人タクシーに乗っていかれました。
 
目的地だった「史跡料亭:花月」…一番見たかった正面玄関は改装中…ガビーン

 
とにかく丸山町は坂や階段が多い。
えっちらおっちら登って行きましたが、すごく疲れました。
蝶々さんたちもこの坂を着物を着て上り下りしていたのでしょう。
 
「梅園身代わり天満宮」には「梅塚」というのがあり、
芸者さんたちは梅を食べた後に種をここまで持ってきたそうです。
化石のようになった古い種の上に、比較的新しい種もありました。
今でも同じようにここへきてお参りしている芸者さんがいるようですね。

さらに坂を登ると「中茶屋」があるのですが、
こちらも改装中。お庭だけ見て帰ってきました。
 
本当はこの後に、竜馬が創設した日本で最初の株式会社「亀山社中」に行く予定。
…でしたが坂の上り下りで足がギブアップ。
断念して路面電車で長崎駅まで戻りました。
疲れを取るための休暇が余計疲れてしまった…(笑)

今日は本来練習がある予定で、駅前の練習会場は空いているとのことだったので、
一人練習会場へ行き、個人練習を1時間。
その後は一度ホテルに戻りましたが、お腹が空いたので、
近くのホテルに泊まっている別組マルチェッロの中島さんと夕食に行きました。
僕は「じげ丼」(※「じげ」=「地元の」)を食べました。
長崎は基本的にご飯などの量が多い。
お腹いっぱいになりました。

ホテルに戻って、コインランドリーでたまった洗濯物を洗って、
あとは寝るだけ。
明日はいよいよ場当たり&ゲネプロです。


今日の一曲…

「さくら さくら」
作詞者・作曲者:不明

 さくら さくら
 のやま も さと も
 みわたす かぎり
 かすみ か くも か
 あさひ に におう
 さくら さくら
 はな ざかり

 さくら さくら
 やよい の そら は
 みわたす かぎり
 かすみ か くも か
 におい ぞ いずる
 いざや いざや
 みに ゆ かん



2011.3.17(木) サクラ

知人の近所では早咲きの寒桜が咲いたそうです。

地を揺らし、海を悪魔と化した自然は、
まるで何事もなかったかのように春の準備を始めているようです。

ところ【サクラ】という名前はもともと…
【サ:神様】+【クラ:台座】という意味からできています。

神様が宿り鎮座する木、それが【サクラ】です。


昔の日本人は、
冬の間に蓄えていたエネルギーを春になって一気に開花させる
サクラに感謝を捧げ、自然の恵みを祈るために、
サクラ:神様に音楽舞いを披露していました。
それが花見の起源。


この未曾有の自然災害を乗りきって、春になり、
誇らしげに開花した桜を見て、
僕たち日本人は何を思うのでしょうか。

今年の花見は僕らにとって特別なものになりそうです。

※参考文献:竹村真一「宇宙樹」


長崎4日目。
今日は夜に別組オケ合わせがあるだけなので完全OFF。
さすがに少し気分を変えないと…と思い、出かけました。
長崎歴史博物館…とても面白かったです。
特に絵巻で見る長崎の風俗や風物はすごく勉強になりました。
もし皆さんも行く機会があれば、2時間ぐらいは入り浸っても飽きないので、
そのつもりで観光スケジュールを組んだ方が良いかと思います。

夜はオケ合わせを見学。
「ラ・ボエーム」の練習の後に「G線上のアリア」をオケが練習。
その様子も見学しました。
聴いていて思わず涙がこぼれそうになりました。
この音色が日本中に届いて欲しい。
マエストロは「もっとパワフルに。力強く何かを支えるように。」
という指示を繰り返していました。
具体的な言葉にはしていませんでしたが、
この演奏で伝えたいことが何なのか、音として伝わってきました。

夜はマッサージ屋さんを呼びました。
「こりゃひどいなぁ…」とグリグリやられてのたうち回りました。
坐骨と目がやられている模様。
明日も完全OFFになってしまったので、少し散歩をしようかな…。



今日の一曲…

【早春譜】
作曲:中田章 作詞:吉丸一昌

一、
 春は名のみの 風の寒さや
 谷のうぐいす 歌は思えど
 時にあらずと 声もたてず
 時にあらずと 声もたてず
二、
 氷融け去り 葦はつのぐむ
 さては時ぞと 思うあやにく
 今日も昨日も 雪の空
 今日も昨日も 雪の空
三、
 春と聞かねば 知らでありしを
 聞けばせかるる 胸の思いを
 いかにせよと この頃か
 いかにせよと この頃



2011.3.16(水) 公演実施決定

長崎3日目。
原発事故問題について不安なのですが、
不安だからこそ情報は受け身じゃダメ。
自分から正しい情報を拾い集める努力をしようと思い、
たくさん勉強をしました。
昼間はずーっとそんな感じで過ごしました。
さすがにホテルに籠りっぱなしは良くないと思って買い物に出ましたが、
なんだか長崎は若干物価が高い??
結局何も買わず、ご飯だけ食べました。

夜はオケ合わせ。
ちょっと寝不足がたたって、あまり上手く歌えなかった。
…。
体調管理しっかりしなきゃ。

オケ合わせの休憩の後に今公演に関して説明がありました。
やはりこちらでも【自粛】の波は押し寄せているようで、
このことに関して話し合いがもたれたようです。
その結果…公演は実施する。
オペラ「ラ・ボエーム」の開演前にバッハの「G線上のアリア」を演奏する。
義援金ボックスを設置して集まったお金は被災地に寄付する。
とにかく僕たちの「想い」はしっかりと伝える。
最善の選択だと思います。
立ち止まることが鎮魂になるとは思えない。
もちろん我関せずで公演をするわけにはいきません。
この公演を通して【祈り】と【想い】を伝えることこそ、
僕らにできることだし、それをお客様に明確に示すことが大切です。
深く賛同し、その意思に応えられるよう頑張ります。


今日の一曲。

【花】作曲:滝廉太郎 作詞:武島羽衣

一、
 春のうららの隅田川 のぼりくだりの船人が
 櫂(かひ)のしづくも 花と散る ながめを何にたとふべき

二、
 見ずやあけぼの露浴びて われにもの言ふ桜木を
 見ずや夕ぐれ手をのべて われさしまねく青柳(あおやぎ)を

三、
 錦おりなす長堤(ちょうてい)に くるればのぼるおぼろ月
 げに一刻も千金の ながめを何にたとふべき



2011.3.15(火) できることは…

今日は午後3時から、
ホテルからすぐ近くの会場で衣裳合わせだったので、
少し早目に出て、同じくホテルからすぐ近くの長崎駅近辺で食事。
とんこつラーメンを食べました。
やっぱり本場のとんこつは東京のとは違うばい(間違った方言)。
その後もウィンドーショッピングをしたり、喫茶店に入ったりして気分転換。
衣裳合わせでは、昨年杉並オペラでお世話になった衣裳さんと再会。
またお世話になります。
ショナールの衣裳はかっこよかったです。
いわゆる汚いボヘミアンではなく、今回は少し羽振りが良い役作りです。

衣裳合わせはすぐ終わったので、少し買い物をしてホテルに戻りました。
またテレビとPCをみながら過ごして、夜は稽古場へ。
さきほど衣裳合わせをしたのと同じ建物なので、ホテルからは徒歩2分ほど。
別組の通し稽古を見学しました。
もう形はできあがっているので、新たに得るものはないのですが、
別組を観ながら、同じ組の共演者さんとシステム的な確認などができました。
マエストロのテンポなども確認できたので良かったです。

稽古が終わったら、今日は一人で食事をしました。
ホテルの近くの中華食堂でかた焼きそば。
やっぱり本場は味が違う!
コクのあるとんこつあんかけがおいしかったです。


さて、音楽家である僕に今できることはないか…と考えました。
考えて考えて、思いついたことがあります。
今日から一週間。
毎日この日記に歌の歌詞を掲載していこうと思います。
それが何か意味のあることかどうかはわかりません。
意味なんてなくてもいい。
ただ、僕自身がいま歌いたいと思う歌をここに残していきます。
第一曲目は、先日師匠の告別式で歌った、師匠が好きだったという曲。

【おぼろ月夜】 詩:高野辰之
一、
  菜の花畠に 入日(いりひ)薄(うす)れ
  見わたす山の端(は) 霞(かすみ)ふかし
  春風(はるかぜ)そよふく 空を見れば
  夕月(ゆうづき)かかりて にほひ淡し
二、
  里わの火影(ほかげ)も 森の色も
  田中の小路(こみち)をたどる人も
  蛙(かわず)のなくねも かねの音も
  さながら霞(かす)める朧月夜(おぼろづきよ)



2011.3.14(月) 長崎へ

今日から長崎へ。
計画停電の関係で最寄り駅からの私鉄は運休の予定でした。
そこで別の駅からJRを使って羽田に行くつもりでした。

ところが早朝ふと目が開いたので念の為調べたら、
頼りのJR某線が終日運休であることがわかり、
慌てて飛び起きました。
すぐにリムジンバスを調べましたが、道路渋滞が予想されて、
それこそフライトに間に合わないかもしれない。
改めてPCを開いていろいろ調べているうちに、
午前中の計画停電は中止されて、上記した私鉄が運行していました。

急いで着替えて準備をして7:30に家を飛び出しました。
電車は動いていましたが、異常な混雑。
キャリーバックを持っている僕はなかなか電車に乗り込めず。
ギューギュー詰めの電車に乗っては次の駅で押し出され、
また乗っては押し出されを繰り返していたら、
朝9:00を過ぎた途端に電車がガラガラになりました。
こんな状況下でも、いわゆる通勤ラッシュだったようです。

山手線もすし詰め状態。
やっとの想いで品川に着いてみたら、京急が乗車規制で長蛇の列。
改札に入るまでの行列がまるでディズニーランドでよく見る光景のようになっていました。
こりゃあかん。電車に乗るまで何時間かかるかわからん…と断念。
別ルートで浜松町から東京モノレールに乗りました。
こちらはとっても空いていました。

4時間以上かけてやっと羽田に到着。
搭乗手続きも済ませて飛行機に乗り込みました。
東京を離れるのは、何だか危険から自分だけ逃げだしたみたいな気持になりました。

長崎に到着すると、ふと身体の力が抜けるような感覚になり、
涙がこみ上げました。
自分は自覚している以上に緊張しながら生活していたんだ…。
基本的に何不自由なく生活していた僕ですらそんなストレスを抱えていたのですから、
被災地の方々や、福島原発に近いところに住んでいる方々、
ライフラインが切断されてしまって困っている方々の抱えているものは、
想像を絶します。

長崎に着くと、たくさんの笑顔に出会いました。
久しぶりにお腹から笑った気がします。
ホテルにチェックインしてテレビを観ると原発の状況が刻々と変化していく。
不安がどんどん高まっていく。
こちらにいても心が押し潰されそうです。

稽古は夜のみ。
ロドルフォ役のロベルト・ポッタさんと初対面。
思ったよりも英語が通じて嬉しかったです。
A組は初めて全役者が揃った訳ですが、いきなり通し稽古。
だけど、芝居が始まるとすぐにそこはボヘミアンたちの屋根裏部屋になりました。
ポッタさんは美しい声で非常にクレバーでロマンチックな歌を歌われます。
しかも芝居がとても素晴らしい。
初めて絡んだとは思えないほどコミュニケーションが取りやすかったです。

通し稽古の後は合唱のトラで東京から来た若い歌い手さんたちと食事。
あっと言う間に時間は過ぎてホテルに戻ったら日付が変わっていました。
すぐにテレビをつけて状況を確認。
やはり原発問題は深刻化していっていました。
Twitterやfacebookでテレビでは報道されていない情報を集めたり、
友人たちとやり取りをしていたら、いつの間にか寝てしまっていました。



2011.3.13(日) 二期会キャリアアップクラスコンサート

昨日に続いて今日も公演は実施されました。
今日は気持ちの整理もつけて会場へ。
昨日も終演後に「歌を聴いて勇気づけられました」等、
心温まるメッセージをいただきました。
与えられた場で精いっぱい歌うことしか僕にはできません。
それを求めて会場に足を運んでくださる方がいる以上、
僕は力の限り歌います。
それが僕の仕事なのだ…と心に誓いました。

きっと公演実施に関してはご非難される方もいると思います。
僕らはその矢面に立ち甘んじてご批判を受ける責任を持っています。
誰のせいでもありません。舞台に立つ以上、それは僕らの責任です。

気持ちを完全に切り替えて、
キャリアアップクラスの皆さんとデュエットを歌いました。
「トロヴァトーレ」、「ランメルモールのルチア」、「椿姫」
それぞれのオペラのしんどい部分をハイライトで演奏するので、
まるでスポーツ大会!
短距離走あり、パワー系トラック競技あり、頭脳戦あり…といった感じ。
とにかく疲れました。
曲間もそれぞれ10分弱しかなく、舞台袖や楽屋では「はぁはぁ」と息を切らしていました。
もっともっと体力をつけてタフにならなければ…。
正直、後半はへばり気味。
残された体力を全て放出して歌っている感じでした。

お越しくださった皆様には本当に感謝しています。
ありがとうございました。

終演後はすぐに帰宅。
明日から1週間以上家を空けるので、
冷蔵庫の中身をなるべく使うべく自炊。
荷造りをしたり、片づけをしたり、明日の準備をしました。
明日の輪番停電で電車がストップするそうです。
遠回りをして羽田空港に行かなければならないので、なるべく早く寝ます。
おやすみなさい。



2011.3.12(土) 二期会アドヴァンスドコースコンサート

コンサートは予定通り公演されました。
正直、こんな状況下でお客様の安全や心情を考えると、
公演開催を支持はできませんでしたが、
それでも主催者の決断に従うしかありません。

複雑な気持ちで会場まで向かいました。
山手線が本数を減らしていて、池袋駅のホームで20分以上待ちました。
新宿駅からも総武線がなかなか動かない状態。
なんとか会場に到着したら普通にリハーサルをしていました。
ちょっとその光景が異常に見えたのは僕だけ??

何にせよ僕がしなければならないことは公演に向けての準備。
気持ちをとにかく落ちつけて、冷静に冷静に…と自分に言い聞かせながら、
ただただ時を待ちました。

客席は閑散としていましたが、それでもお越しくださったお客様はいました。
とにかく全力で歌うのみ。
自分の中で何かを切り捨てる瞬間がありました。
それがすごく痛かった…。

演奏は全力で頑張りました。
昨日の長距離徒歩のせいでふくらはぎが張っていて、
歌っている最中に足がつってブルブルブル!と痙攣した時は焦りましたが(笑)
全体的な出来は悪くなかったと思います。
それでも「公演成功」とか「おめでとう」と言う気持ちにはなりませんでした。
華やかな舞台の上で拍手を浴びていることが痛くて、
下げた頭をなかなかあげられませんでした。

急遽アンコールとして瀧廉太郎の「花」を歌いました。
歌いながら、何だか複雑すぎる心情に、涙が出てきました。
それでも笑顔で歌いました。

…とは言えコンサートは成功でした。
こんな状況で会場までお越しくださったお客様には、いくら感謝しても足りません。
出演者の中にも、何時間もかけて会場に駆け付けた方。
宮城にいる身内の安否を確認してからいらして、立派に歌いあげた方。
一つ一つのことが尊く感じました。

ただ楽屋に戻っても笑顔にはなれません。
とてもじゃないけど打ち上げに参加する精神状態ではありませんでした。
そっと会場を後にし、まっすぐ帰宅しました。
千駄ヶ谷の街は人が誰も歩いておらず、不気味でした。
帰りの電車もガラガラ。東京はひっそりと静まり返っています。
帰宅しても東北や北関東の地震は続き、家がグラグラと揺れています。

明日もコンサートは実施されるようです。
やるからには頑張ります。
とにかく冷静に…心静かに今夜は過ごせたらと思います。

皆様も、情報に振り回されてアドレナリン出まくっている可能性があります。
軽いパニックを起こしているかもしれない、と自覚するだけで、
かなり落ち着くことができるそうです。
どうぞ、穏やかにお過ごしください。



2011.3.11(金) 大地震

大変な地震災害が起きました。
この地震でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りしています。

地震発生時は二期会キャリアアップクラスの助演の為、
西新宿の芸能花伝舎スタジオにいました。
リハーサルの最中だったのですが、
パイプ椅子に座っていても座っていられないほど揺れました。
船に乗っているように床がうねっているような感じで、
スタジオの壁がギシギシときしみました。
しばらく演奏は続きましたが、さすがに限界になり外へ避難。
この建物は学校を改装したものなので、校庭に避難しました。

周りは新宿の高層ビルに囲まれ、
ビルは皆、細い大木のようにグニャリとひしゃげながら揺れていました。
免震構造だから揺れていても大丈夫だ、と頭では考えていても、
やはりその異様な光景は気持ち悪いものでした。
ビルが動いている…どれか一つが倒れてきても僕らにはどうすることもできない。
怖いはずなのですが、なぜかああいう時ってすごく冷静になります。

揺れが収まってはスタジオに戻り、
再び揺れが大きくなると校庭に避難。
数回同じことを繰り返しながらも、最後までリハーサルを通しました。
揺れるスタジオの中で「椿姫」のデュエットなどを歌っている自分は、
何ともおかしな状態でした。

I-Podや携帯電話のwebで情報を得ていくと、
電車が全て止まっていることがわかりました。
携帯電話は電話もメールも機能していなかったので、
スタジオの公衆電話を使って夜の仕事はキャンセルし、帰路につきました。

大通りに出ると、異様な光景。
車は渋滞。そして、新宿方面から歩道を埋め尽くす人たちが、
民族大移動のように中野方面に歩いてきました。
それを見て新宿駅に行っても電車は動いていないことを察知し、
GPSで地図を見ながら何も考えず自宅に向かって歩いていきました。
距離は30kmほど、徒歩だと4時間…。
歩きながら対策を考えようと思いながら、とりあえず中野まで歩きました。

もしかしたらいつか西武線が復旧するかもしれないので、
まずはバスで練馬へ行こうとしましたが、
バスは渋滞でなかなか進まない。
web情報では練馬に出たところで帰宅する術はない。
江古田近辺でバスを下車。
外の空気が冷たくて、このまま歩いたら風邪をひくかもしれない。
やむなく知人宅に泊めてもらうことにし、小竹向原まで歩きました。

友人宅で夕食を食べさせてもらい、身体も温まりました。
寝る準備のため歯を磨き、着替えを済ませた時、
西武線が運転再開したとの情報が入りました。
慌てて友人に無礼を詫び、江古田まで走り西武線に乗ることができました。
帰宅は日付を超えて00:45。

地震による家の中の被害を覚悟していましたが、
もともと普段から揺れる家…いつも通り何の被害もありませんでした。
何だか拍子抜け…心配して損しました。
お風呂に入り、テレビをつけて驚きました。
こんな大変な被害が出ているとは…。
とにかく災害時は情報がなかなか手に入らない。
電話もメールも機能しなくなった時、mixiやtwitterはとても頼もしく感じました。
友人たちの「つぶやき」で情報を正しくチェックし、
E-mobileによって自分の現在地などを確認。
この2つの情報が入って来なかったら、次の行動を判断できなかったし、
もっともっと不安だったと思います。

なにはともあれ、無事帰宅できて良かったです。
足や腰、身体全般がパンパンに張っていますが、
明日歌えるんだろうか???



2011.3.10(木) 師匠とのお別れ

僕の師匠:大森誠先生が3月4日に永眠されました。
今日は告別式。
式の最後には全員で涙ながらに「おぼろ月夜」を歌いました。
大森誠先生のご冥福をお祈り申し上げます。

午後は池袋でレッスン4時間。
夜は川口市民合唱団の指導でした。

今日は花粉がひどかったです。
目がしょぼしょぼ…。
鼻はずるずる。
漢方薬の小青龍湯を飲んで少し症状はおさまりましたが、
今の時期にこれでは、本格的な春が来たらどうなってしまうのか…。
4月に本番を入れなくて良かったです…。



2011.3.9(水) 帰ってきました

リムジンバスで長崎空港へ。
飛行機で一っ飛び…東京に帰ってきました。
羽田から新宿へ直行。
二期会アドヴァンスドコースの通し稽古でした。
この土日にある本番の為に長崎の稽古を抜け出してきました。
長崎の皆さん、すみません。
通しは順調に進み、なんとか歌いきりました。

今度は渋谷へ移動。
オペラ「泥棒とオールドミス」の音楽稽古。
長崎「ラ・ボエーム」の副指揮者でもある松井先生による稽古。
いろいろ長崎のレポートもしました。
…と、ここでびっくり。
先ほどアドヴァンスドコースでも一緒に助演をした、
テノールの高田正人さんと再会。
隣のスタジオで別の稽古があったそうです。
他にも知り合いの方々ともたくさん再会することができて…。
嬉しかったです。

帰ってきても心休まることはありませんが、
東京でも頑張ります。
…それにしても、東京に帰ってきた途端に花粉症がひどくなった。
やっぱり空気の純度が違うのでしょうか?



2011.3.8(火) 長崎3日目

昨夜食べ過ぎたせいか朝食は食べられず。
お昼はちゃんぽん発祥の店「四海?」で皿うどん(太麺)を食べました。
東京で食べる皿うどんは本来かた焼きそばと呼ばれていたもので、
今ではごっちゃになってしまっている為に、
長崎では「皿うどんの太麺、細麺」と区別しているそうです。
 

昼食後は港に沿ってお散歩。

新しい水辺公園はとてもデザインがステキで、
デッキを歩く足音も心地良かったです。
長崎県美術館を発見。

この建物も実に現代的でかっこ良い。
展示物は見れませんでしたが、内装を味わうだけでも十分でした。
ショップもアーティスティックなグッズがたくさんで楽しめました。

一度ホテルに戻って昼寝。
夕方は「原爆資料館」、「爆心地」、「平和公園」に行ってきました。
夜の稽古場は平和公園のすぐ裏だったので都合も良かったのです。

路面電車を乗り継ぎ、浜口町駅下車。
普通の住宅街の坂を登った先にあった原爆資料館。
あまりにもひっそりと建っていたので驚きました。

原爆の悲惨さを訴えるとともに、
その戦争という行為に至った人間の愚かさが強調されていました。

長崎にいると感じますが…
この街の人たちは原爆を語る時に「被害者」という意識をあまり持っていないように感じます。

昔から外国と交流の深かった長崎。
アメリカという国を憎んではおらず、
悪いのはアメリカ人じゃなく戦争だ、と語ります。

そしてキリスト教の精神が息づいています。
この街には「許し」と「祈り」が満ちている。

それは爆心地と平和公園を訪れた時に確信しました。
 
ひっそりとただ広い虚無な空間:爆心地
拍子抜けするほど特別なものが何もなく、美しい広場。
静かに、ひっそりと、ただただ平和を祈る。

原爆の悲劇よりも、平和への祈りが、
長崎という街の存在価値であるという想いが押し寄せてきました。
 
平和公園の裏手には低い土地が広がり、
住宅街の中に数多くの教会がひしめき合っていました。

平和記念像は何を想うか…


夜の稽古は半分見学。
確認をしていく稽古でした。
これで僕は一度稽古を離脱。
明日、東京に帰ります。
今度長崎に来るのは月曜日の通し稽古。
しばらくお別れ…ちょっと寂しいです。

稽古の後はマエストロたちとイタリアンを食べに行きました。
とってもおいしかったです。
今日は食べすぎませんでした(笑)



2011.3.7(月) 長崎2日目

今日の稽古は夜から。
長崎に通うようになってから初めて自由時間が与えられました!

そんな訳で今日は午前中から長崎観光第1段。
オペラ「蝶々夫人」のモデルとなったツル(グラバー夫人)が住んでいた、
【グラバー園】へ行ってきました。
地図を見たら、なんとホテルからすぐ目と鼻の先。
歩いて5分もかかりませんでした。
グラバー園公式ウェブサイト

領事シャープレスの気分を味わうために、
グラバー邸まで坂を歩いて登っていきました。
シャープレスは蝶々さんとピンカートンの新居にたどり着くと思わず息を切らせますが、
確かに坂の勾配は激しく、また結構歩く感じでした。

たどり着いて後ろを振り返ると…

あぁ…まさにこの風景だ…。
Sharpless:"Nagasaki...il mare...il porto"
シャープレス:「ナガサキ…海…港」

彼が見た風景がリアルにそこには広がっていました。
そして、蝶々さんがピンカートンを待ちながら毎日眺めていた港。
今も大きな船が停泊し、汽笛を鳴らしています。


↑グラバー夫人ツルの部屋
オペラ「蝶々夫人」では蝶々さんの家は完全な和式の家ですが、
グラバー邸は洋館でした。
でも1階建だし、屋根は和式の瓦作り。
独特の構造でした。

↑グラバー邸のミニチュア

 
左:植物がたくさん育てられたサンルーム 右:ツルの部屋の内装


どこを見ても鳥肌が立ちまくりました。
ツルさんは蝶々さんのような生き方(死に方)はしていませんが、
実際に17歳で前夫との間にできた子と生き別れ、
また彼女は実際に「お蝶さん」と呼ばれていました。
原作小説の作者ロングの姉と、このお蝶さん(ツル)は交友があったことなど、
様々な資料を集めた結果、このツルさんが蝶々さんのモデルであることは、
かなり有効な説だと思います。

それにこの景色を見れば…
プッチーニが描こうとした景色もまさにこれだったと確信が持てます。
そんな訳で周りのカップルや修学旅行生たちを尻目に、
静かながら独り、テンションあがりまくり。

↑グラバー邸にあった望遠鏡…ツルが蝶々さんだとしたら…。

その後も長崎の街を散策しました。
本当に不思議な街です。
日本と中国とヨーロッパが同居している街並み。
中国のお寺の裏に日本のお寺があり、その隣には西洋の教会がある。
それらが混在していることに長崎の街の人たちは何の疑問が抱いていない。
その大らかさ、朗らかさこそがこの街の特徴なんだと感じました。

星出マエストロもおっしゃっていました。
「この街では教会の鐘とお寺の鐘が同時に鳴るんだ。」
究極の国際都市。究極の友好都市。
それが長崎という街。
そしてそこに住んでいた領事シャープレスが、
いかに日本人の中に溶け込むように暮らしていたか。
ホテルのすぐ近くにあるイギリス領事館の脇の石畳の路地が、
今でも街に何の不自然さもなく馴染んでいることが答えです。

他にもたくさんすごい風景があったのですが、
写真では表現できませんでした。
皆さんにもぜひ一度足を運んでいただきたいです。

夜は今日から合流されたマエストロも参加で立ち稽古。
やっぱりマエストロが稽古場に入ると緊張感が積分レベルで倍増。
あぁ緊張した。
そしてちょっとだけ褒められて、たくさん叱られました。

夕食は毎度のことならてんこ盛り。
こっち(長崎)に来ると食べすぎちゃうな。



2011.3.6(日) 長崎1日目

更新は帰宅してから…と思っていたのですが、
今回はパソコンを長崎まで持ってきてみました。
重かったけど、やっぱりパソコンが手元にあると何かと安心。
メールやデータのやり取りが一時期間できないというのは、
どうしても不便ですので、あると便利ですね。
持って来て良かったです。

今日は羽田空港に向かう途中で、
線路内に誰かが立ち入ったせいで山手線が止まり、
危うくフライトに間に合わないところでした。
何とか別ルートで電車を乗り継いで間に合いました。
ほんと。。。あぁいうの迷惑だよなぁ。
とにかく今後は余裕を持って家を出る習慣をつけねば。


長崎に着いてみると、大雨。
上空から雲の下へ下りると突然の雨粒だったので驚きました。
演出の直井先生と、ロドルフォ役の角田さんと同じ飛行機でした。
長崎空港でお迎えに来てくださったオペラ協会の方と合流し、
一緒にちゃんぽん等を食べて腹ごしらえ。
それから稽古場へ向かいました。

長崎は〜雨〜だった〜♪

実は先日、21日組のロドルフォさんが体調不良で降板。
急遽、代わりに角田さんがロドルフォ役を引き受けてくださいました。
そんな訳で、救世主:角田さんと初稽古。
全ての幕を一気に通してしまいました。
角田さん、さすが…。
細かい説明を受けていないのに、すんなり空間に馴染んでくださり、
大きな問題もなく全幕通せました。
ラストシーンではあまりの感動に…
(オペラ協会の方々はいろんな想いもあったのでしょう)
稽古場のみんなが涙していました。

夜は合唱の皆さんとの合同稽古。
今日は指揮が誰もいなかったので、僕が勝手出て振りました。
思ったよりも振れたのと、このオペラの指揮ってとても疲れることを発見。
普段のあのマエストロのエネルギーは一体どこから湧いてくるのだろう?

練習後は皆さんと食事。
お野菜中心のヘルシーなメニューでしたが、
たくさん食べました。
明日から星出マエストロも合流。
明後日はイタリアから20日組ロドルフォのボッタさんが来日。
いよいよ本格的な稽古になっていきます。
花粉症に負けず、頑張るぞ!



2011.3.5(土) 光:りひと

昨夜は熟睡できました。
今日は江東少年少女合唱団の指導。
子供たちのテンションを引き出すためには、
こちらがその倍のエネルギーで向かっていかなければならない。
少しずつ子供たちとの【音楽的な】コミュニケーションも取れてきて、
僕のペースも理解してきてくれたようで、
スムーズに練習が運ぶようになってきました。
…僕のねちっこさに慣れてきたのかも…。

2時から7時までみっちり5時間練習したら、
東陽町の江東文化センターから住吉のティアラこうとうへ移動。
ある人に会うために…。
その人とは大学時代の友人:指揮者の海老原光氏。
まだ大人の事情で公表できませんが、一緒に仕事をすることになり、
その打ち合わせにやってきました。

僕ら二人の名前はどちらも「光=Licht」。
同じ「光」でも、彼の場合は「炎の光」。
ものすごいエネルギーでとにかく熱い!
僕はどちらかと言うと「太陽の光」。
ただそこにいて放っているだけ。
二人の対照的なテンションが絡み合うとても面白い打ち合わせでした。
超短い時間でしたが、互いの主張はしっかり出し合って、
後は互いに相手の意見を持ちかえって熟考する。
そして二人とも同じところへ向かっている…。
というのがその一瞬のうちに互いに感じ合えました。

その後、彼が江東ジュニアオーケストラを指導している様子を見学。
とても指示が明確でわかりやすく、なおかつテンポが良いから、
見学をしているこちらまでグイグイと引き込まれてしまう。
…そんなリハーサルでした。
名指揮者の風格を持っている人だなぁと感じました。
とても勉強になりました。
これから多々関わり合えることになればいいな。
とても楽しみです。


明日から水曜日まで長崎へ行ってきます。
blogの更新をお楽しみに。
りひとのブログ
※その他、Twitter、facebook、mixiもやっています。



2011.3.4(金) 社会復帰

結局まるまる一週間このインフルエンザに振り回されました。
今日からやっと復帰です。
とは言え、体力はまだ戻っていない。
薬の副作用もあって、身体がフラフラしていました。

今日は午後から、二期会愛好家キャリアアップクラスの助演。
通し稽古でした。
演技の方はいちおうこれで確定したわけですが、
とにかく体力が足りない…。
声はちゃんと出るのですが、踏ん張りが利かないのと、
すぐ息が切れてしまう。
普段はこんなに気力・体力を使って歌っていたのか…
と、改めて感じました。

夜は熊谷へ。
ベーレンタール男声合唱団の指導。
とにかく声を作らずに、しっかり前で発音することを徹底指導。
まだすぐには理解できないかもしれないけど、
期待しています。
トップテノールがあと1人いると楽なんだけどなぁ・・。

帰宅は今日も午前様。
初日からハードな一日でした。



2011.3.3(木) ラスト・引きこもり

こんな形で長期休暇をいただいてしまった訳ですが、
とても優雅な生活でした。
…といっても何もできなかった…。
要するに時間をこんなに無駄に使った日々も何年ぶりだろう。
さすがに最終日の今日は確定申告書類を完成させました。

「時間」というのは、使い方でこんなに違う感覚になるのか…。
忙しい時の空き時間はあんなにあわただしくて濃厚なのに、
今回は薄い時間があっという間に過ぎていく感じでした。
でも気分がかなりリフレッシュできました。

明日からまたあわただしい日々が戻ってきますが、
自分のペースをしっかり保って、朗らかに過ごそうと思います。

最後に、今回のインフルエンザ休暇で、
たくさんの方にご迷惑をおかけしたことを心からお詫びいたします。
すみませんでした。



2011.3.1(火)-2(水) 続・インフルエンザ そして 続「ていおん!!」

自宅療養中です。
熱はありませんが、薬が切れると気管支炎。
インフルエンザA型は呼吸器系から蝕むやつなので、
相変わらず体内にはウィルスどもは潜伏している模様。

とは言え、頭も身体も自覚症状的には元気なので、
布団に入っていても眠れず。
起きていました。

食欲もあるので普通に食事もできているし、
昨日まで続いていた下痢も止まりました。
体力を戻しつつあります。

今日は、「ていおん!!」の録画を観ていました。
やっぱり面白いや。
今回は特にMCが冴えていた気がします。
ていうか、熱があるのに僕しゃべり過ぎだ…。
完全にツッコミに回っているようです。

歌もそんなに調子悪くはなさそう。
ただ、やはり録画とライブでは雰囲気が違う。
ライブの盛り上がりはさすがに伝わりきれていない感じです。
第3回は皆さん、ぜひ会場へお越しくださいね。

それでもとりあえず録画でも「ていおん!!」を味わいたい方はコチラ↓
【ハイライト・スナップ集】
決めポーズその1
イエローまさかのポーズ失敗
次のポーズを確認中
マジンガー…
Z!!!決まった〜!