毎年、ディズニーリゾートIKSPIARIカウントダウン「第九」の 合唱指導をやらせていただいています。 ここでは2006年の合唱練習風景をレポートしてみました。 <第1回練習> まずはいきなり全部通してみました。 この曲は本当に通して歌うのも大変!・・・改めて頭からゆっくり練習していきました。 【D】"Deine Zauber binden wieder" 一つ一つの言葉にアクセントをつけているのはいいけど、 それが音量のアクセントになると響かない声で歌う部分ができてしまうので、 「アクセント=音の長さ」という意識を持ってもらうよう練習。 それから歌詞の内容ですが、慣れたもので昨年も参加された方は、 「"Zauber"の意味は?」 と質問しても、すぐ答えが返ってくる。嬉しかったです。 歌っている内容をイメージすれば自然に声色は変わるもの。 大事な言葉のピックアップと、文章としての内容をイメージして歌っていきました。 "sanfter"(=soft:やわらかい)は羽毛布団よりもやわらかく・・・などなど。 こんな調子で【E】まで細かく練習した時点で1時間経過。10分休憩です。 軽く発声練習をし直してから【G】"Kusse gab sie〜"の部分を練習。 まずは最後の"Gott"のハーモニーをねちっこく練習。 それから"Kusse gab sie〜"は裏拍に主題(例のメロディ)が隠れているから、 ソプラノ・テノールとアルト・バスではアクセントが違うことを認識してもらって、 実際に体感するために手拍子を違うリズムで打ちながら歌詞を読む練習。 テノールの音が一箇所不安定だったので時間をかけて音の確認。 バスの発声のコツを伝授。 【M】の部分をサラッとやって(この部分は一度は歌わないとスッキリしないですからね)、 途中は次回の練習に残して、一気に最後の【Prestissimo】まで飛びました。 まずは早口で読む練習。 この部分も3拍目にアクセントがきますから、実は8ビートなんですよね。 僕が8ビートでリズムを打ち、それにのせて読んでもらいました。 "Kuss"=「キス・口づけ」でもあるけど「歌声」でもあるから大事。 ソプラノの高音の伸ばし方を発声から練習。 音が深く広がっていきながら伸ばしていきます。 休符の表現を一緒に考えていき、4パートのリズム(歌い方)の違いをパート毎に練習。 フィナーレの【Maestoso】の細かい表現を映画のワンシーンのようにイメージしてもらい、 身体全体で「喜び」を感じながら歌いました。 <第2回練習> 最初の歌詞【D】はとってもすごい内容。 「あなたの(Deine)不思議な力(Zauber)は、時(Mode)が強く(streng)引き離してしまった(geteilt)ものを再び(wieder)結び合わせる(binden)」 世界中で行なわれている戦争は長年のいがみ合い、報復がどんどん拡大していったものです。 『時』が隔ててしまった、同じ人類同士も再び手を握り合うことがあるのでしょうか? そんな奇跡のようなことを実現できる『不思議な力』を求めて【Zauber】を歌って欲しいと思います。 ---つづき--- 「全て(Alle)の人々(Menschen)は兄弟(Bruder)となる(werden)。そこはあなたの(dein)やわらかい(sanfter)羽(Fluger)が留まる(weilt)場所。」 【sanfter】はやわらかく歌うと共に、やわらかい羽毛に包まれたような心地よい・幸せな・安心しきった表情で歌わなければなりません。 一節前の【streng geteilt】のときの表情との対比を大きくつけなければならず、 このワンフレーズだけでも数種類の表情と、声質・表現を使い分けなければなりません。 次のシーン【E】は前回たくさん練習したので、お尻の部分を練習。 【Und wer's nie gekonnt, der stehle...】 のdim.の最後がゆるんでしまうのを修正。 【weinend sich aus diesem Bund.】のハーモニーを徹底練習。 この部分は【weinend(泣きながら)】の単語と[P]の指示にこだわりすぎて、 弱い表現を求めてしまう指揮者が多いのですが、 文章としての内容はかなりキツイもの! 決して弱くならずに、言葉の強さで歌って欲しいので打楽器的なつっつくような感じで歌ってもらいました。 次は【G】。 【Kusse gab sie...】の部分ですが、前半は前回たくさん練習しました。 拍の裏に動機が隠れているので、そこを強調して歌うように。 今日は後半の「2分音符にスタッカート」の歌い方を練習。 一つ一つの単語(音節)を1つずつ息を止めてお腹で切る練習をしました。 【J】(カワイ出版ではミスプリントなのか【J】の表記が存在しない)の男声合唱は不発だったので、次回に後回し。 有名な【M】はサラッと流して(これも次回やります)、その後のAndante maestoso(595小節目)から。 「抱き合え(Seid umschlungen)幾百万の者たちよ( Millionen)、このくちづけ(Diesen Kuss=口から発せられる愛=私たちの歌声・・・と解釈します)を全世界に!(der ganzen Welt)」 この部分は音域が高いのですが、全世界にこの歌声を届けるためにはこの高さが必要なのです。 【N】 「兄弟たちよ(Bruder)!星空(Sternen-zelt)の上(uber')に、愛する父(lieber Vater)が住んでいる(wohnen)に違いない(muss)。」 このシーンは二人一組になり、肩を抱き合いながら歌いました。 星空の上を見上げるように歌うとノドが開いて高音も伸びやかに出るようになりました。 ここで歌われている【Vater】とは「神」を指していますが、 僕はこの曲に宗教観を持ち込みたくはありません。 「神」とは「愛」です。 ここが僕のこの「第九」のテーマでもあります。 世の中で一番必要なものは「愛」です。 それを口にして訴えることが現代社会では欠けている・・・。 ここで皆が胸を張って「愛」を求めることが、「第九」を歌う意義です!! 必ず人は愛によって再び結び合わされる・・・。 その可能性は星空のはるかかなた上であろうとも、1%でもあるに違いない(muss)。 【Ihr sturzt nieder, Millionen?...】 合唱が出る1拍前にオーケストラが同じ和音で鳴ります。 そのオケの音の後ろから境目なく合唱が聞こえてきたい。 その繰り返しをこの部分では徹底して練習しました。 【Uber Sternen muss er wohnen】 星空の上に向かって手を伸ばして求めます(実際に演技しながら練習しました)。 最後の[PP]は祈りにも近い嘆願です。 この和音は音が♭しがちですが、指の先まで伸ばして歌ったら正しいピッチに到達していました。 壮大なニ重フーガを超え、バス→テノール→アルト→全員と引き継いでいく部分。 [p]の指示で弱くなってしまっているので、しっかりした声で歌うようにしました。 目で迫るように緊張感を持って歌えば、音量は[f]でも[p]に聞こえます。 2分音符をしっかり伸ばして、厚みのある声で歌ってもらいました。 758小節目の<>を大げさにやる合唱団が多いのですが、僕には下品に感じます。 むしろソフトに、愛情をもって<>をして欲しいのですが、 それを強調するためにもその前の【muss ein lieber Vater wohnen】は息の量・スピードを一定にしてなるべく平らに、薄い支えで歌います。 その後のソプラノのG(高音)は[pp]ですが、空に祈りを届けるつもりで。 【S】 【Deine Zauber, deine Zauber binden wieder...】はその前に歌っているソリストの後ろから聞こえてくるように小さく。 いたずらをする前のようにワクワクしながらクレシェンドです。 合唱の姿が完全に見えるのは【was...】から。ここは思いっきり[f]です。 次の【Alle Menschen...】の出は裏拍で難しいのですが、 決して拍数を数えず、準備もせずに突然飛び出すように歌います。 [Poco Adagio]に入ったら、一気に声を抜き、一人一人の声を完全に消すように。 霞がかかったような、もやのような感じで歌って欲しい。 映画で言えば回想シーンのような、現実にその場にはない場面のようにしたいので、 声も聞こえないぐらいでちょうどいいです。息だけで歌えるともっといいのですが・・・。 そっからそのままの勢いで最後まで歌って(前回練習したので)今日はおしまい。 |